「会議での意思決定が会社の業績を決める。だからこそ、会議のやり方が重要になる」――この相原さんの主張には深くうなずけるとともに、本書で紹介されている「成果を出す会議」にするための数々のテクニックは目からウロコの連続でした。特に、「議論をリアルタイムに可視化する」は、まさしくその通り。発言をすぐに見える化してしまえば、議論の道筋を失うことはありませんし、何より、議事録を作成したり、あとで読み返すという手間が省けます。これはぜひ読者の皆さんにお試しいただきたいです。また、今後、自分が会議に参加する際は、参加者の発言をノートに書き出しながら進めるようにしたいと思います。担当した者が言うのもなんですが、本当にお得な情報が満載の1冊です。
POSTED BY貝瀬
【最短の時間、最小限の労力で会議の成果を最大化する本】
皆さんは、会社において「最も大切な業務」は何だと思いますか?それは「会議」です。
なぜなら、会議における意思決定の内容・質が会社の業績を決めるからです。
だからこそ、参加者の時間・労力・人件費という貴重なリソースを会議に投じるのです。
それにもかかわらず、多くの会社では、会議の重要性が認識されておらず、残念な会議がはびこっています。
「いったい、この会議は何を目指しているのか?」
「みんなが自分の言いたいことを言い合うだけで会議の体をなしていない!」
「話が盛り上がったのはいいが、結局何も決まっていない!」
「ダラダラと長いだけで、肝心なことが何1つ議論されない!」
「論点が噛み合わず、しょっちゅう紛糾してしまい結論が出ない!」
こうしたことを防ぎ、会議を成果につなげる、つまり、業績向上につながる意思決定をする場として正しく機能させるための方法を解説したのが本書です。
業績向上につながる
「正しい会議のやり方」を完全解説!
最短の時間、最小の労力で最大の結果を得られる!
意思決定の速度と質が劇的に上がる!
著者の相原秀哉さんは、20年以上にわたりコンサルタントとして、さまざまな会社の3000以上の会議をサポートしてきました。その中で相原さんが気づいたことは、いくら優秀な人材がそろっていても、正しい方法で会議を運営しないと成果は出ない、ということでした。
スポーツでいえば、いくら優れた選手がそろっていても戦略・戦術がないと試合に勝てないということです。
相原さんは、数々のクライアントの会議に参加する中で、すなわち会議の目的を達成して成果を出す確率を上げるためのメソッドを編み出しました。
それを余すところなく解説したのが本書です。
「残念な会議」を「価値を生む会議」に変えるには次の3つを徹底させる必要があります。
①始まる前に半分終わらせておく
②議論をリアルタイムで可視化する
③フレームワークを使って議論をコントロールする
それぞれ簡単に説明します。
「①始まる前に半分終わらせておく」は、一言でいうと、入念に準備することで議論に集中できるようにするということです。テーマ、ゴール、議論の進め方、参加者の選定など、事前準備を万端にしてうまくゆく確率を徹底的に高めるのです。
「②議論をリアルタイムで可視化する」は、ホワイトボードやPC画面上で、発言をリアルタイムで要約・可視化することで論点の違いや論理構造を明確にするということです。これにより、参加者全員が会議内容を理解・共有できます。また、会議後にわざわざ議事録を作成・共有する手間も省けます。
「③フレームワークを使って議論をコントロールする」は、参加者の発言をPEST、SWOT、ロジックツリーなどの基本的なフレームワークに当てはめ、それをリアルタイムに可視化することです。こにより、論点や論理構造が明確になり、「何をすべきか、決めるべきか」に集中することができます。
このほかにも、本書では、議論の停滞を突破するためのテクニックや多数決によらず意思決定の質を高める方法なども解説しています。
「自社のダメダメな会議を変えたい」「会議の意思決定のスピードと質を上げたい」という経営者、ビジネスパーソンの皆さまは、ぜひ本書をお読みいただき、お仕事に役立てていただけたらと思います。
気になる本書の内容
本書の内容は以下の通りです。第1章 始まる前に半分終わらせておく
01 準備段階で会議を成功に導く
うまくゆく状況を先に作っておく
「さあ、今日の議題はどうしましょうか?」はNG
入念に準備することで議論に集中できる
02 ゴール(狙い)を定める
その会議は何を達成したら成功なのか?
「○○について検討する」がNGな理由
「どこまで目指すのか?」を事前に決めておく
03 アプローチ(進め方)を定める
行先と行き方の両方を決めておく
アプローチを考えるときの2つのポイント
ポイント① 何をどのような順番で話すか
ポイント② どのような形式で話すか
04 進行をシミュレーションする
思いがけない逆風に備えておく
事前に意識しておくべき3つのポイント
①想定される会議の雰囲気
②参加者の性格
③議題の中での難所
第2章 議論をリアルタイムに可視化する
01 リアルタイムに議論を可視化するメリット
盛り上がるのに何も決まらない会議
議論をリアルタイムに可視化・共有することが重要
会議1時間の情報量は1万8000~2万文字程度
複雑な論理構造を可視化することで理解・共有する
02 論点を可視化する
「論点のズレ」とは「解くべき問いのズレ」
〈ケース1〉商品Aの売上の減少幅が予測の範囲内に収まっている場合
〈ケース2〉商品Aの売上減少率と市場規模の縮小率が同じ場合
03 要約を可視化する
発言を要約し、論点からの逸脱を防ぐ
プレゼンツールでリアルタイムに可視化する
04 分類を可視化する
意見を分類し、抜け漏れを防ぐ
意見をどのように分類すればよいのか?
05 階層を可視化する
違和感の正体は「階層のズレ」
①空間の階層
②時間の階層
③組織の階層
④業務の階層
06 関連を可視化する
議論のつながりを見失わないために
関連を可視化する方法
論理的な関連のパターン
第3章 フレームワークを使って議論をコントロールする
01 議論をコントロールするための3つのポイント
なぜ話が長引いてしまうのか?
目的を共有できても話が噛み合わないケース
会議にフレームワークを導入する
アンゾフの成長マトリクス
①既存市場×既存製品(市場浸透戦略)
②新規市場×既存製品(新市場開拓戦略)
③既存市場×新規製品(新製品開発戦略)
④新規市場×新規製品(多角化戦略)
フレームワークの落とし穴
フレームワーク活用のポイントは「集中」「拡散」「整理」
02 議論を集中させる
収拾がつかなくなってしまうのはなぜ?
一方通行の発言が続くだけの会議
フレームワークで議論を集中させる
「PEST分析」でマクロ環境を分析する
Political(政治的要因)
Economic(経済的要因)
Social(社会的要因)
Technological(技術的要因)
「SWOT分析」で戦略を考える
Strengths(強み)
Weaknesses(弱み)
Opportunities(機会)
Threats(脅威)
03 議論を拡散させる
良いアイデアがなかなか出ない理由
QCDフレームワークで議論を拡散させる
Quality(品質)
Cost(コスト)
Delivery(納期)
品質、コスト、納期を相互の補完関係として考える
①品質向上→コスト低減、納期短縮
②コスト低減→品質向上、納期短縮
③納期短縮→品質向上、コスト低減
フレームワークを使って広範囲に目を向ける
04 議論を整理する
参加者の発言にまとまりがないのはなぜ?
ロジックツリーで議論を構造化する
ロジックツリーの作り方
MECEで要因の「抜け漏れダブり」を防ぐ
Mutually Exclusive(相互に排他的/ダブりなく)
Collectively Exhaustive(総合的に包括的/漏れなく)
ロジックツリーでMECEがうまくいかなかったら?
「四則演算」で要素を分解する
第4章 停滞を突破する最速化テクニック
01 議論の「停滞」を突破する
会議における沈黙は金ではなく、単なるムダ
発言を妨げる4つの要因
①論点がぼやけている
②論点が大きすぎる
③論点が抽象的すぎる
④論点に関する知識や経験が不足している
参加者は「知識」「専門性」「視座」で選ぶ
あえて「詳しくない人」を参加させる場合
事前に論点をきちんと設定しておく
02 議論の「紛糾」を突破する
意見は出るものの、話がもつれてしまう
「議論が噛み合わない」の3つの要因
①論点と議論の粒度がそろっていない
②特殊事例を一般論や傾向と同列で捉えている
③論点が交錯している
03 議論の「ループ」を突破する
話が堂々巡りしてしまうのはなぜ?
①会議のゴールが不明瞭
②会議のゴールまでのアプローチが不明瞭
③議論の進捗を把握できていない
④論点そのものをループ構造で捉えている
⑤判断が必要なところで議論している
意思決定には常にリスクが付きまとう
04 反対者への対応
反対意見を出す人の扱いはくれぐれも慎重に
反対者が現れる2つのパターン
反対者への対応に失敗したケース
終了後に反対する人にはどう対応する?
反対意見を成果につなげる方法
反対意見から新しい意見を生み出す弁証法
第5章 多数決、全会一致で意思決定をしてはいけない
01 多数決がナンセンスな3つの理由
重要な意思決定を多数決で決めてはいけません
①意思決定の質が下げる
②意思決定後に悪影響が出る
業務の生産性が下げる
02 全会一致にこだわることなかれ
全会一致は経営にダメージを与える?
①必要なリスクを取れなくなる
②意思決定が遅れる
③内容が骨抜きにされる
全会一致のデメリット①「投資タイミングの逸脱」
全会一致のデメリット②「機会損失の発生」
03 意思決定は論理と情報、シナリオに基づくべき
重要な意思決定における5つのステップ
ステップ①意思決定の背景と目的を整理する
ステップ②意思決定で考慮すべき要素を洗い出す
ステップ③意思決定の選択肢と各要素についての情報を提示する
ステップ④各選択肢を選んだ場合に考えられるシナリオを描く
ステップ⑤シナリオを比較検討して意思決定を行なう
意思決定の質を上げる3つの強力な手法
①ベイズ統計 ――不確実な意思決定に使える
②ゲーム理論 ――ライバルの行動を分析・予想する
③デシジョンツリー ――複雑な意思決定プロセスを視覚化
著者について
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株式会社ビジネスウォリアーズ 代表取締役
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慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法「Lean Six Sigma」を活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の最上位資格「Lean Master」に認定される。
業界・業種を問わずホワイトカラーの業務改革コンサルティングに従事し、業務生産性向上やDX推進、DX認定取得などの案件を手がける。
Webメディア「マイナビニュース」にてビジネスコラム「成果を上げながら定時で帰る仕事術」を約5年にわたり連載。
著書に『リモートワーク段取り仕事術』(明日香出版社)、共著書に『研究開発者のモチベーションの高め方と実践事例』『研究開発部門の新しい“働き方改革”の進め方』(ともに技術情報協会)がある。