以前の私は、陰謀論をネタとして楽しんで消費していましたが、コロナ禍以降、陰謀論にはまる人が社会問題化していることで、笑えなくなってしまいました。そうした問題意識で執筆を依頼したのが、本書が初の著書となるオカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家の雨宮純さん。「自然派」「ジョブズ」「ボードゲーム」……これらの言葉と、まったく関連性がなさそうな「陰謀論」――。しかし、それが一本の線で繋がっていると知ったときは、戦慄に近い感動を覚えるでしょう。我々を「闇落ちさせる」言葉は、日常のそこかしこに潜んでいるのです。
POSTED BYかばを
アロマとQアノン 点と点を繋ぐ線とは――?
新型コロナウイルスによる世界的パンデミック、トランプ政権の終焉、中国の台頭……など、世界と社会が劇的に変化している今、日本でもQアノンなどの陰謀論がにわかに広がりを見せ、社会問題にまで発展している。たとえば、「コロナウイルスワクチンはビル・ゲイツによる人口削減計画の一環」など、荒唐無稽な主張をする著名人もいる。バカらしいと感じる人がほとんどだろうが、実はこうした陰謀論に陥る落とし穴は、我々の身近にたくさん存在していることに自覚的な人は少ない。「チャネリング」「ホメオパシー」といった言葉が、怪しい世界と関連性があることは、なんとなく想像できるだろう。
しかし、「スティーブ・ジョブズ」「オーガニック」「アロマ」「量子力学」「ボードゲーム」という人名や一般名詞が、誰かを闇落ちさせる入り口の言葉になる可能性があるとは、想像がつかないのではないだろうか。事実、「癒し」や「自然」を掲げるスピリチュアルには安全なイメージを持つ人は多いが、米国ではヨガやスピリチュアルのインフルエンサーがSNSに陰謀論を投稿し、Qアノンの入り口となっていたことが指摘されている。
本書では、こうした何食わぬ顔をして点々と存在している「言葉」が、ある補助線を引くことによって、一つのミステリアスな奔流につながることを、歴史と膨大な文献を用いて突き止め、自身や身近な人を守るために、その危険性について警鐘を鳴らす。
あなたはこの事実を知っていたか?
◎「マクロビオティック」は日本人が生み出したもので、栄養学ではなく東洋思想が基盤。◎「マーフィー」を日本に紹介した人物は「催眠商法の教祖」「マルチ商法の教祖」と呼ばれていた。
◎「シュタイナー教育」を創始したシュタイナーの原点は、ユダヤ陰謀論のキッカケをつくった神智学(後に脱退し、人智学を立ち上げる)。
◎『水からの伝言』の作者は、その理論を「ポエムであって科学ではない」と認めている。
◎「カイロプラクティック」はスピリチュアリズムを信仰していた開発者が、異世界からのメッセージを受け取って生まれた。
◎「スティーブ・ジョブズ」は民間療法に頼ったことを後悔していた。
◎石原慎太郎は「ネッシー」を探していた。
◎アメリカの議会議事堂を襲撃して逮捕されたQアノンシャーマンは、「オーガニック食品」しか受けつけない自然派マッチョだった。
…etc.
目次
まえがき 自然派でスピリチュアルなヒーラーかつ陰謀論者で、さらにはマルチ商法の販売員Ⅰ カウンターカルチャーとニューエイジ―
第1章 カウンターカルチャーとヒッピー
第2章 ニューエイジに繋がる源流
第3章 ニューエイジの覚醒
第4章 現代社会に潜り込んでいるニューエイジ
Ⅱ 自己啓発とマルチ商法
第5章 ニューソートと自己啓発
第6章 マルチ商法の思想
Ⅲ 精神世界とスピリチュアル
第7章 知識人を魅了した精神世界と大衆に浸透したオカルトブーム
第8章 実利とカジュアルのスピリチュアル
Ⅳ コンスピリチュアリティ スピリチュアルと陰謀論
第9章 闇の勢力と闘う救世主ドナルド・トランプという虚像
第10章 我々の日常に侵食してきた陰謀論
あとがき 自然派とスピリチュアルとマルチ商法と陰謀論を繋ぐもの