どうすれば不動産を金融商品化できるのか、不動産ファンドの大事な基礎知識、SPC法の上手な使いこなし方、JREITの重大なポイント--など、不動産金融ビジネスを手掛ける人のための入門書。
不動産証券化の理解を妨げる難しい用語や複雑なしくみも、この本でバッチリわかります。
●もくじ
第1章 不動産はこうして金融商品化される1 ポスト・ネットバブルの投資戦略を考える
グロースからバリューへ/「手のなかの鳥」理論
2 一度でいいからこういう不動産投資をしてみたい
大口投資家のメリット/小口化に必要なファクター/
理想的な不動産投資とは
3 物件の価値しか見ない不動産投資市場の誕生
JREIT VS 上場不動産株/物件の価値しか見ないJREIT
4 「不動産と金融の融合」とは何か
メインの金融プレーヤーは証券会社/
不動産投資利回りはどこで決まるのか/
不動産の情報公開が重要なわけ
5 不動産金融工学の発展で何が起こるのか
不動産金融工学とは何か/そもそも不動産の価値とは何か
第2章 不動産の金融商品化はここまで進んでいる
1 刑務所REITに見るPFIの原点
刑務所は最適な投資対象/英国PFIと証券化
2 官が仕掛ける一口100万円の不動産証券化商品
SPCを義務付けた競争入札/一口100万円の時代へ
3 東京都初の証券化商品「CLO」がスタートした
CLОはローンの証券化商品/CLОのしくみ
4 興銀の予測「不動産証券化市場は将来180兆円に」
興銀レポート/不動産投信は株式投信を越えられない
5 貸出競争加熱気味のノンリコースローン
真のノンリコースローンとは/ノンリコースローンの現状
6 途絶えそうもない不動産の外国人買い
8000億円の外国人買い/外資にも勝ち組と負け組みが
7 会計ビッグバンが不動産金融に与えるインパクト
会計ビッグバンとは何か/不動産金融への影響
第3章 不動産を金融商品化するために
各プレーヤーは何をするべきか
1 機関投資家の参入が不動産投資を変えた
100年前のアメリカでは/機関投資家の不動産投資参入/
実物不動産からREITへ
2 不動産投資リスクが低くなるポートフォリオ理論の基礎
「リスク」を「危険」と訳してはいけない/マーケットリスクとユニークリスク
/ポートフォリオ理論の基礎中の基礎
3 米国の大学が教える最適なフォーメーション
欠かせない3つのマネジメント「PMT」「AMT」「PFMT」/
もっとも重要なプロパティ・マネジメント
4 アセット・マネジメントが物件のバリューアップに成功した実例
ロックフェラーセンターのアセット・マネジメント/
名門ロックフェラーセンターをめぐる買収劇/スパイヤー氏のAMT
/AMTとは物件をピカピカに磨き上げること
5 まずスペースあたりのNPV(純現在価値)を計算しよう
日米ビルオーナーの投資基準の違い/NPVとは何か
6 不動産のROEを極大化しよう
企業も不動産も共通目標は投資価値の極大化/
PBR、PER、ROEの関係
第4章 不動産ファンドの基礎を知ろう
1 ファンドとは何か
ファンドの意味/投資信託の誕生
2 アメリカの不動産ファンドの類型と現状
不動産ファンドの三つの類型/プライベート・ファンド
3 米国REITの概要
REITとは何か/REITの基本的な仕組み/REITの種類
REITの投資対象/REITの市場概要と現状
4 二つの不動産ファンドスキーム「資産流動化型」と「資産運用型」
不動産ファンド法制の流れ/資産流動化型スキーム
/資産運用型スキーム
5 分断されたままの「流動化型スキーム」と「運用型スキーム」
流動化型と運用型が一体化するスキーム/
二つのスキームが結びつかない理由
第5章 SPC法と流動化スキームを使いこなそう
1 ABS(資産担保証券)市場の将来展望
拡大途上にある日本のABS市場/SPC法を使った証券化商品の動向
2 SPC法改正の概要
そもそもSPC法とは何か/SPC法改正で何が変わったのか
3 SPC法で何ができるのか
SPC法改正で実現したこと/いまだに残る税制上の不具合
4 SPC法はこう使おう
SPCは銀行融資には勝てない/
SPCの発行証券を地主層に売る自信がありますか/
政策投資銀行が始める企業再編のための新型ローン
5 SPCの実例
典型的なスキーム/SPCの実例/小規模SPCの実例
第6章 JREITと運用型スキーム
1 JREITとは何か
JREITの始まり/投信法の改正/
投信法改正の主なポイント
2 JREIT設立の手順と要件
JREIT組成のプロセス/
利益相反及び利害関係人との取引/東証の上場要件
3 アジアに広がるREIT
アジアREITの動向/REITはお国柄を表す
4 JREITに不足しているもの
改善すべき2つの点/REITが自家運営・管理することの効用/
UPREITの効用/UPREITの仕組み
5 JREITの今後の展望
ファースト・ティアに見るJREITのプロフィールとメリット/
セカンド・ティアグループの動向/JREITの流動性に不安はないか
第7章 それでも残る
不動産金融ビジネスの不安要因
1 フジタREIT失敗の教訓
日本企業のREIT第1号はフジタだった/
売れ残り物件をREITに入れるな
2 不動産会社と外資のトラブルから学ぶ教訓
横取りに怒る外資系投資家/不動産投資顧問業の難しさ
3 イトーヨーカ堂方式による証券化の挫折
イトーヨーカ堂方式による証券化/挫折の背景
4 ケイマン諸島の憂鬱
ケイマン諸島の効用/ケイマン諸島等規制案
5 SPCの5%ルールの波紋
SPCのオフバランス問題/会計上のオフバランス認定条件
●編集担当者より一言
不動産の証券化は今後ますます増えると予想されますが、そのしくみは少々難しく、いまいちわかりづらいものです。本書は欄外用語解説も豊富に付け、できるだけわかりやすく、読みやすく書いていただきました。不動産プレーヤー、金融プレーヤーのための実用入門書です。