本書とほかのプレゼン資料作りの本との違いは、「スライドを作り始める前にいかに時間と思考力・体力を使うか」に重点を置いていることです。たとえば、著者さんは「そもそも、本当に資料を作る必要があるのか? もしかしたら、口頭で説明すれば目的は達成されるのではないか? そうであれば資料を作る必要はない(時間と思考力・体力を温存できる)」ということから考えようと説いています。
また、「資料を作る」と決めても、すぐにパワーポイントを立ち上げてスライドを作り始めるのではなく、まずは紙とペンを使って、ロジックを徹底的に練り上げることを進めます。実際にスライドを作り始める前の段階に注力することを推奨しています。
確かに、これは理にかなっていて、最初に進むべき方向と進み方をしっかり決めた地図を用意しないで、出発してしまっては、目的にたどり着くのに時間がかかったり、あるいは、たどり着けない可能性すらあります。
貴重な時間・体力をムダにしないためにも、必要なことです。
このように、ある意味で異端の資料作成本となりましたが、本書の解説をお読みいただければ、ビジネスで成果をあげる資料を必ず作れるようになります。資料作りにお悩みのビジネスパーソンの方はぜひご一読ください。
POSTED BY貝瀬
資料を制する者はビジネスを制す
現在のビジネスでは、資料は重要な役割を果たします。たとえば、営業職であれば顧客への提案資料、企画職であれば社内の稟議資料、コンサルタントであればクライアントへの報告資料など、あらゆるシーンで活用されています。
他者の理解や納得を得て、効果的、効率的にビジネスを推進するためには、資料は必要不可欠なものとなっています
資料の良し悪しでビジネスの成果は決まる、「資料を制する者はビジネスを制す」といっても過言ではないでしょう。
本書では、他者に理解・納得し、動いてもらうための「良い資料」の極意を解説します。
本書で解説する方法は、著者の仲川顕太さんが、数々の試行錯誤を繰り返した結果、会得し、今ではグロービス経営大学院で、「資料作りが苦手」と悩む多くの受講生を救い、成果を出させている実践的なメソッドです。
いきなりスライドを作り始めてはいけません
「資料を作る」となったとき、多くの方がプレゼンテーションツールを立ち上げて、スライドを作り始めるのではないでしょうか。しかし、その前にやるべきことがあります。
「自分を何のために資料を作るのか?」を考えることです。
そもそも自分が成し遂げたい目的があり、そのためには他者を説得し、動いてもらうする必要があるわけですが、そのためには何をどう伝えるかをしっかりと考える必要があります。
ただやみくもにスライドを作っても、「人を動かす」資料を作るのは難しいでしょう。
まず、ゴールをしっかり設定しましょう。
そのためには「背景→目的→ゴール」の流れとそれぞれの意味を知ることが必要です。
①背景:どんな背景があるのか?
②目的:その背景にどんな目的があるのか?
③ゴール:目指すべき状態は何か?
この3つを明確にした上で、資料を使って説得したい相手のタイプを分析し、今相手が考えてること、そして「相手が知りたいことは何か?」を考えます。
つまり、「相手はこういうタイプで、今こう思っている」というスタート地点と、「自分は最終的に相手にこうなってほしい」というゴールが明確になります。
そうすることで、初めてどのような資料を作り、スタート地点とゴールのギャップを埋めるべきかが明確になるでしょう。
面倒くさがって、このプロセスを省いてしまうと、相手に刺さる資料を作ることは不可能です。
必ず、やるべきです。
資料作成の3原則
ゴールが明確になったら、具体的に資料作成にとりかかることになります。仲川さんは、人にわかりやすく伝わり、動いてもらうための資料を作るためには、次の3つの原則を守るべしと言います。
○資料作成の3原則
①全体の構成はピラミッド構造にする
②メッセージ(ボディ)を研ぎ澄ます
③文字、図、色を徹底的に削ぎ落とす
それぞれについて簡単に説明しましょう。
①全体の構成はピラミッド構造にする
伝えたいメッセージを明確にし、設定したゴールに到達するための全体のロジックを考えること、次にそのロジックをメッセージに分解すること、そして最後にストーリーラインに落とし込むことです。
本書では、そのために必要なピラミッドストラクチャー(論理の構造)、「空→雨→傘」フレームワーク、ストーリーラインについて具体的なステップとともに解説します。
②メッセージ(ボディ)を研ぎ澄ます
ボディは、メッセージの説得力を高めるための情報が整理された部分を指します。
「情報が整理されたもの」である以上、中身が充実しており、伝えたいことが一目で伝わるように表現されていることが重要です。
本書では、情報をどのように配置するかについて、さまざまなパターンで詳しく解説します。
③文字、図、色を徹底的に削ぎ落とす
多くの方が見た目が華やかで、美しいデザインの資料を作ろうとします。
また、美しいスライド作りに関する情報がたくさんあります。
しかし、それは資料作りの本質ではありません。
あくまで資料は、それを見た相手に、自分の主張を伝えて、理解・納得してもらうことが目的です。
であれば、資料の構成要素は、なるべくシンプルにして、相手に必要な情報ができるだけダイレクトに伝わるようにするべきです。
すると、文字、図、色は徹底的に少なくするとともに、位置や大きさのバランスや統一感にも注意するということになります。
本書では、そのためのシンプルな資料を作るためのコツを実際のスライドのサンプルとともに解説します。
いかがでしょう?
①~③を徹底すれば、かなり完成度の高い資料を作れると思いませんか?
本書では、こうした「人を動かす」資料作りに必要な基本的な考えやテクニックをふんだんに盛り込んでいます。
ここまで読まれて、資料作成能力を高め、ビジネスの成果をさらに上げたいとお考えになったビジネスパーソンの皆さまは必読です。
気になる本書の内容
本書の内容は以下の通りです。第1章 資料は何のために作るのか?
―そもそも資料の役割とは?
資料は人を動かすために存在する
「人を動かす」とは「ギャップを埋める」こと
資料は本当に必要なのか?
資料の本質とは?
人はロジックだけでは動かない
「資料を作るべきかどうか」の意思決定
ほかの効果的な打ち手と比較する
資料作成の要否を考える際の4つのステップ
第2章 資料を作るときには何を頭に入れるべき?
―資料作りの全体像
すぐにスライドを作り始めてはいけません
プロセスに分解すれば「何をすればよいか」で悩まなくなる
全体像とプロセスで捉えることで資料作成能力は向上する
資料作成能力を上げるための公式
同じ仕事でも得られる成長の程度には差がある
各ステップにおいて大事なのは最初の部分
資料は中身が9割
見た目と中身を磨く順番に気をつけよう
第3章 資料のゴールを設定する
―ゴールは「具体的に」「状態」で定義する
ゴール設定の重要性
ゴール設定のプロセスは「背景 → 目的 → ゴール」
ゴールは「具体的に」「状態」で定義する
ゴール設定の次はスタート地点の設定
相手を分析することの重要性
「SKINO」のフレームワークで相手を分析する
なぜ多くの人はゴール設定を怠るのか?
思考の癖とは?
良い癖、悪い癖
思考の癖がビジネスに与える影響
思考の癖の厄介さ
思考の癖を矯正するための5つのステップ
〈実例〉顧客との質疑応答での思考の癖
第4章 メッセージの作り方
―伝えたい内容や主張を簡潔かつ明確に表現する
資料作成におけるメッセージの重要性
中身の作り込みにはステップがある
全体のロジックの重要性
ピラミッドストラクチャーを活用しよう
〈練習〉お菓子メーカーB社
相手の視点で問いを考え抜く
問題解決の流れをベースに問いを洗い出し、絞り込む
相手の問いに答えるメッセージを決める
メッセージを支えるロジックを固める
ストーリーラインで相手を引きつけ誘導する
ストーリーラインの重要性
相手の知りたいことに「早く」答える
どの部分に重点を置くか?
メッセージの全体像を最後にチェックしよう!
第5章 ボディの作り方 Part1
―伝えたいことを一目で伝える情報整理の技術
資料作成で最も多い悩みは「ボディ作り」
そもそもボディとは何か?
「良いボディ」とはどのようなものか?
ボディ作りにおける2つの悩みポイント
ボディ作りの5つのステップ
ボディの役割
必要な情報を見極める
第6章 ボディの作り方 Part2
―情報の整理と構造化に箇条書きを活用する
整理することの必要性
情報の整理の仕方:情報の構成×情報の関係性
情報の構成は3つのステップで作る
〈ステップ1〉情報を書き出し、箇条書きで整理する
良い箇条書きのために抽象度を操作する
〈ステップ2〉スライド構成に沿って再整理する
箇条書きには何を書くのか?
〈ステップ3〉構成を定量化し、ボディの骨格をイメージする
情報数から構成を確認しよう
次元で整理しよう
応用編:論理構成マップを頭の中に持っておこう!
情報の関係性を捉える
情報の関係性のパターン
関係性を見るポイントは同階層内+階層間
ボディに落とす
資料作りはスライド骨子まで先に作り込む
上司・メンバー間のレビューも骨子レベルで行なうべし
第7章 デザインの重要性
―「減らす」「揃える」「空ける」
デザインの重要性
「良いデザイン」を決めるために、利用シーンを先に考えよう
プレゼン資料の活用における注意点
ビジネス用途のスライドはシンプルが一番
減らす① 色
減らす② 図形
減らす③ 線
減らす④ 文字
揃える① 文字
揃える② フォント
フォントによって印象が変わる
揃える③ 図形
揃える④ アイコン
空ける① 行間
空ける② 図形と文字の間隔
資料の枚数が増えたときの工夫
グラフを活用しよう!
違いを確認しよう!
最後に確認しよう!
第8章 練習してみよう!
―資料作りのテクニックを実践する
〈練習〉健康ドリンクメーカーX社
目的を定める
著者について
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京都大学 医学部 人間健康科学科 卒業
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グロービス経営大学院 教員
大学卒業後、現株式会社リクルートの住宅領域にて法人営業に携わったのち、グロービスに参画。
グロービス入社後は、法人企業の人材育成・組織開発の企画・設計・コンサルティングに従事。
MBA取得後はHRtech領域における新規事業の立ち上げを担い、現在は事業責任者として、事業戦略策定/プロダクト開発をリードするかたわら、デジタル部門の経営メンバーとして中長期戦略策定/組織開発に携わる。
また、グロービス経営大学院の創造系ファカルティに所属し、思考系/ベンチャー系プログラムの講師や、投資先の経営支援を行ないながら、スタートアップ経営に関する研究活動にも従事する。