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  • これまでマーケティングに関する本は何冊も手掛けてきましたが、ここまで原理原則を掘り下げて論じた本は初めて担当しました。「顧客ニーズを発見・創造し、それを具体化・伝達する企業活動すべて」というマーケティングの定義、それを実際の企業の事例96個に当てはめて解説するという内容は、多くの「マーケティングってよく聞くけど、いったい何なの?」という人の長年の疑問を氷解させてくれることは疑いないでしょう(そもそも私自身が非常に勉強になりました)。マーケティング思考は、マーケターに限らず、ビジネスに携わるすべての人が持つべき最も基本的かつ重要な思考です。本書をお読みいただき、日々のお仕事の中で実践していただくことで確実に血肉にできるはずです。すべてのビジネスパーソンにおすすめの1冊です。

    貝瀬

    POSTED BY貝瀬

    マーケティングを正しく理解できていますか?

    多くのビジネスパーソンが重要だとわかっていながらも、正確な意味をしっかり把握できていないし、実践できていないのが「マーケティング」です。

    マーケティングのことを「市場調査」だと思う人もいるでしょうし、「販売戦略」を指して使う人もいるかもしれません。
    あるいは「商品を売るための施策全般のこと」と言う人もいるかもしれません。

    もし、マーケティングを「商品を販売すること」と言ったらら、それは完全な間違いです。

    なぜなら、そもそも商品が売れているということは、顧客が喜んで買ってくれているからです。
    つまり、マーケティングの本質は「商品を販売すること」ではなく、「顧客を満足させること」です。

    多くの人が曖昧なまま実践している
    「マーケティング」の全体像を明快に解説!
    古今東西の有名企業の事例96個を紹介
    エピソードを通じて誰でも楽々理解できる!




    顧客のニーズとウォンツを理解する

    では、「商品を販売すること」と「顧客を満足させること」は何がどう違うのでしょうか?

    これは企業側の視点か顧客側の視点かで違ってきます。

    どういうことでしょうか?
    ビジネス書でよく紹介される「顧客はドリルが欲しいのではない。穴が欲しいのだ」というフレーズで説明しましょう。

    ある人がホームセンターにドリルを買いに行ったとします。
    それは「ドリルが欲しい」からでしょうか?

    違いますよね。
    この人の本当の目的は「穴を空ける」ことです。
    穴を空けられる器具であれば、別にドリルでなくてもよいかもしれません。

    「穴」のことをマーケティング用語で「ニーズ」といいます。
    そして、「ドリル」のことを「ウォンツ」といいます。

    ニーズは顧客の根本的な欲求のことで、ウォンツはそのニーズを満たすための手段の1つにすぎません。
    つまり、「商品を販売すること」はウォンツ視点、「顧客を満足させること」はニーズ視点ということです。



    顧客視点を洞察して成功をおさめた「クイックルワイパー」

    たとえば、顧客視点の成功例の1つとして花王のクイックルワイパーが挙げられます。
    1994年に日本で発売され、6年後の2000年には世帯普及率が45%と爆発的にヒットしました。
    立った状態のままで床の雑巾がけができることが消費者のニーズに刺さりました。
    電機メーカーが掃除機の吸引力向上や騒音抑制といったハードウェアのスペック向上に血道を上げている市場において、すき間を潜り抜けた花王が見事に顧客ニーズを捉えた事例です。

    私たちは、電機メーカーのように自社商品に囚われて、顧客ニーズを満たすことを忘れがちです。

    実際、本書の著者、丹羽亮介さんがさまざまな企業の新規事業提案や企業戦略立案を審査・評価すると、大半が「自社に都合の良い提案」が多いそうです。

    たとえば、
    「自社の今の強みを掛け合わせるとこんなことができます」
    「自社にとってこの領域は新規事業になるので参入してみる価値があります」など。

    要は、顧客にとってのメリットや顧客ニーズの理解ががすっぽり抜け落ちてしまっています。

    これでは施策も成功確率も下がってしまい、せっかくヒト・モノ・カネといった資源を投入しても実を結ばないという残念な結果になってしまうでしょう。

    そうならないためには、顧客のニーズ、ウォンツをきちんと分けて考えることが大切です。



    マーケティングとは何か?

    さて、ここで改めてマーケティングの定義を確認しておきましょう。

    端的に言えば、マーケティングとは「顧客の視点に立って継続的に行なう企業活動のすべて」です。

    具体的にどういうことでしょうか?

    ポイントは、次の2つです。

    1つ目は、顧客にきちんと評価されるニーズを見つけることです。

    そもそもニーズのないところにどんなに良い商品・サービスを投入しても売れませんし、結果として企業も存続できません。

    2つ目は、価値あるニーズを発見した上で、それを具体的な商品・サービスとしてしっかり作り込んで顧客に届けることです。

    単に商品を作るだけでなく、その商品を顧客に認知してもらい、買ってもらえるというフェーズまで持っていく必要があります。
    そのために必要なのがプロモーション(広告宣伝)戦略やチャネル戦略です。

    この2つを合わせて「顧客ニーズを発見・創造し、それを具体化・伝達する企業活動すべて」となります。



    本書のコンセプト

    本書のコンセプトは、こうしたマーケティングの全体像を体系的に理解していただき、「自社が何ができていて何ができていないのか」を知っていただくいただくことです。

    本書では、古典的な事例から最新の事例まで、96個の企業事例を参考にしながらマーケティングの全体像を押さえていただくようにしています。

    その基礎の上で個別のテクニックを学んでいけば、一層その役割(と限界)が理解でき、理論やテクニックを有効に活用できるようになるでしょう。

    これまでの「当たるも八卦当たらぬも八卦」という行き当たりばったりの「マーケティング施策」から卒業し、より仮説検証と改善がしやすくなる施策へと進化させられるに違いありません。

    ちなみに、本書は動画配信プラットフォームUdemyの「はじめてのマーケティング」という動画講義がもとになっています。
    現在、3万6000人を超えるビジネスパーソンがこの講義を受講しています(2024年6月現在)。

    本書は、「マーケティング思考を身につけて成果を上げたい」と考えている、すべてのビジネスパーソンの皆さまにおすすめの1冊です。



    気になる本書の内容

    本書の内容は以下の通りです。

    第1章 マーケティングとは何か?
     ――顧客視点での価値創造

    1-1 マーケティングと顧客視点
    ニーズとウォンツから考える「マーケティング的発想」
    〈事例1〉クイックルワイパー
    顧客視点がないサービスは失敗する
    〈事例2〉全日本空輸(ANA)の海外ホテル事業
    〈事例3〉D2Cのメリット

    1-2 顧客ニーズの進化と多様性
    ニーズは常に進化する ――次のニーズを予見せよ
    ニーズの多様性を理解する ――顧客への共感性と未来への洞察
    〈事例4〉T型フォードの盛衰
    〈事例5〉アルコール飲料・旅行先・洋菓子ニーズの多様化
    〈事例6〉日本の半導体産業の衰退
    〈事例7〉検索ニーズの変化とGoogleの苦境
    〈事例8〉アトピー性皮膚炎患者のニーズ
    〈事例9〉大人用オムツ

    1-3 マーケティングとは何か
    マーケティングの定義と全体像
    ①顧客ニーズの発見・創造
    ②顧客ニーズの具体化・伝達
    売上方程式とマーケティングの関係

    1-4 マーケティング理論の歴史的発展
    マーケティングの歴史と顧客ニーズの変化

    コラム 史上初、グローバルな世代の誕生?


    第2章 顧客ニーズを発見する
     ――セグメンテーション&ターゲティング

    2-1 セグメンテーションの重要性
    絞らなければ顧客ニーズは決まらない
    〈事例10〉イオン・イトーヨーカドー・和民の苦境
    〈事例11〉ザ・リミテッド

    2-2 セグメンテーションの実践
    ①消費者セグメンテーション
     i)地理的変数― 所変われば品変わる
     ii)人口動態的変数―さまざまな顧客属性に伴うニーズ
     iii)心理的変数―内面への飛躍
     iv)行動変数―データ分析との掛け合わせ
    〈事例12〉江崎グリコのGABAとLIBERA
    〈事例13〉メガネスーパーの業績回復
    〈事例14〉食品業界、自動車業界 ~地理的変数によるニーズの違い
    〈事例15〉自販機、複写機、コーヒーチェーン ~コロナ禍の人流変化に影響を受けた業界
    〈事例16〉化粧品業界 ~人口動態的変数によるニーズの違い
    〈事例17〉コンビニエンスストアのお一人様商品 ~世帯構成の変化の影響
    〈事例18〉ナイキのJust Do Itキャンペーン~心理的変数の事例
    〈事例19〉スターバックスの「第三の場所」~心理的変数の事例
    〈事例20〉ホンダのスーパーカブ~行動変数によるニーズの違い
    〈事例21〉パナソニックのレッツノート
    〈事例22〉テイクアウト焼き肉

    ②提案型セグメンテーション  i)普遍的に評価される3つの価値
     ii)TPOで区別した価値訴求
     iii)プロセスの細分化と統合
    〈事例23〉コーヒー市場のセグメンテーション ~コーヒーギフト、アイスコーヒー
    〈事例24〉アップル、ボルボ ~製品リーダーの事例
    〈事例25〉牛角 ~オペレーショナル・エクセレンスの事例
    〈事例26〉俺の株式会社 ~オペレーショナル・エクセレンスの事例
    〈事例27〉Dell、ハーレーダビッドソン、行きつけの居酒屋 ~カスタマーインティマシーの事例
    〈事例28〉バレンタイン用ワイン、ナイトブラ、アサヒのワンダ ~Time(時)による区別例
    〈事例29〉スーツ市場 ~Place(場所)、Ocasion(場面)による区別例
    〈事例30〉アフタートリートメント、ブースター化粧品、ほけんの窓口 ~プロセス細分化の事例
    〈事例31〉ファブリーズ、全身シャンプー ~プロセス統合の事例

    ③顧客セグメンテーション
    〈事例32〉ローソンの顧客セグメンテーション
    〈事例33〉ヤマヒロの顧客セグメンテーション

    2-3 ターゲティング ――なぜ1番でなくてはいけないのか?
    ターゲティングに必要な2つの条件 ――「規模感」と「勝てること」
    〈事例34〉USJのターゲティングの失敗
    〈事例35〉日本経済新聞、ボルボ、News Picks、ヘルシア ~1位になれるターゲティング
    〈事例36〉日本一高い山、世界一高い山

    コラム 顕在ニーズか? 潜在ニーズか?
     〈事例37〉メルカリとバイセルテクノロジーズ ~顕在ニーズと潜在ニーズ


    第3章 より深い顧客ニーズを洞察する
     ――行動観察とペルソナ設定

    3-1 成熟社会におけるインサイトの重要性
    より深い洞察(インサイト)を得るために
    〈事例38〉ネスレ日本のネスカフェアンバサダープログラム
    〈事例39〉味の素「CookDo(クックドゥ)」
    〈事例40〉大戸屋の店舗展開

    3-2 インサイトをいかに獲得するか
    行動観察によって顧客の心の動きを探る
    〈事例41〉P&G「レノア」における行動観察
    ペルソナ設定で顧客像への臨場感を高める
    〈事例42〉シンガポール向けスマートフォンの開発例

    コラム ブランドの人格化とペルソナ設定とは違う
    〈事例43〉スープストックトーキョーの秋野つゆ


    第4章 「アレといえばコレ」
     ――ポジショニングで差別化を不要にする

    4-1 差別化できない時代の「ポジショニング」
    ポジショニングとは何か?
    〈事例44〉エバラ焼き肉のタレ、コーヒーギフトはAGF、マヨネーズはキユーピー ~ポジショニングの代表例
    〈事例45〉TSUBAKI(旧・資生堂)のポジショニング
    ポジショニング・マップ
    〈事例46〉ハンバーガーチェーンのポジショニング
    〈事例47〉アサヒWONDA ~朝のコーヒー

    4-2 ポジショニングを実現するには
    ポジショニングの手法を工夫する
    〈事例48〉ルルレモンのポジショニング手法
    〈事例49〉GoProのポジショニング手法
    ポジショニング・ステートメント
    〈事例50〉ファイア ワンデイ ブラック(キリンビバレッジ)のポジショニング・ステートメント例
    〈事例51〉マインドシーズ「寺子屋」のポジショニング・ステートメント例


    第5章 顧客ニーズの具体化・伝達
     ――マーケティング・ミックス

    5-1 マーケティング・ミックスとは何か?
    顧客に価値をどう伝えるか?
    〈事例52〉幸楽苑と日高屋 ~4Pの違い
    〈事例53〉美津濃の勝ちパターンとその変化 ~スポーツ用品メーカーの4P
    〈事例54〉ナイキの頂上戦略
    〈事例55〉ルルレモン② 4P
    売上方程式とマーケティング・ミックス

    コラム ルルレモンの4P

    5-2 4Pの戦略①商品戦略(Product)
    多様なニーズを想定する
    〈事例56〉ハーレー・ダビッドソンの情緒的価値
    顧客が価値を感じるのはいつか?
    〈事例57〉スカンジナビア航空の真実の瞬間
    〈事例58〉P&Gの真実の瞬間
    〈事例59〉GoogleのZMOT
    顧客との価値共創
    〈事例60〉GEの航空機エンジン① ~モノ売りからの脱却
    〈事例61〉テスラの価値共創
    〈事例62〉ユーチューブ、クックパッド ~顧客が直接参加するモデル

    コラム ピーク・エンドの法則
    〈事例63〉旅館の見送りサービス

    5-3 4Pの戦略② 価格戦略(Price)
    価格の経営に対する影響
    価格設定と顧客選好度
    〈事例64〉どのワインを選ぶか? ~松竹梅効果
    〈事例65〉ストリーミングサービス、携帯電話の料金プラン ~市場浸透価格
    〈事例66〉アップルのiPhone ~上澄み吸収価格
    〈事例67〉スイスの高級腕時計 ~バリュープライシング
    〈事例68〉キーエンス ~バリュープライシングでの超高収益
    価格ミックスを意識する
    〈事例69〉スシローの価格戦略
    〈事例70〉亀田製菓「柿の種」の国民投票
    誰がいつ払うのか?
    〈事例71〉子ども関連商品(教育費、おもちゃ、ゲームなど)の支払いモデル
    〈事例72〉社会保険の公費負担の支払いモデル
    〈事例73〉トリンプ・インターナショナルのおねだりモデル
    〈事例74〉グーグル、フェイスブック、無料Wi-Fiの広告モデル
    〈事例75〉GEの航空機エンジン② ~ジレット・モデル
    〈事例76〉テレビやタブレットのサブスクモデルの可能性 ~IoTの活用

    5-4 4Pの戦略③ チャネル戦略(Place)
    リーチとコントロール可能性のトレードオフ
    〈事例77〉コカ・コーラの原液ビジネス
    チャネルは一度構築すると変えることが難しい
    〈事例78〉パナソニック、日立の代理店モデル ~町の電気屋さん
    〈事例79〉ヤマダデンキとEC ~フランチャイズモデルの制約
    〈事例80〉ダイドードリンコの自販機ビジネス
    チャネルの質を高める
    〈事例81〉P&G「パンテーン」の「店頭SKU最適化プロジェクト」
    〈事例82〉トライアルHD×サントリー酒類 ~棚管理のDX
    〈事例83〉オービックビジネスコンサルタントのコールセンター
    〈事例84〉アイリスオーヤマのセールス・エイド・スタッフ

    5-5 4Pの戦略④ プロモーション戦略(Promotion)
    顧客とのコミュニケーションの変化
    カスタマージャーニー ――顧客体験の流れを考える
    〈事例85〉コメ兵のカスタマージャーニー
    〈事例86〉バニッシュ・スタンダードの「スタッフ・スタート」
    プロモーション戦略の方向性 ――インサイド・アウトか、アウトサイド・インか

    コラム マインドフローのどこに注力すべきか?
    〈事例87〉自動車ディーラーにおけるキャンペーン用DM


    第6章 ブランド戦略
     ――世界観を伝える重要性

    6-1 ブランドとは何か
    ブランドとその育成
    〈事例88〉オリエンタルランドのブランド育成
    ブランドは資産になる ――ブランド・エクイティ
    〈事例89〉サントリーのライン拡張 ~BOSSとサントリーの天然水
    〈事例90〉トヨタとENEOSのカテゴリー拡張
    ブランド・ターゲットとセールス・ターゲット
    〈事例91〉無印良品におけるブランドターゲット

    6-2 経営戦略の中のブランド
    ブランドの建付けが重要
    〈事例92〉バッグワークスのBtoC事業
    〈事例93〉ユニクロとGUの建付け
    ブランドの対象範囲

    6-3 ブランドとソーシャル・グッド
    ブランドに社会的価値が求められる時代
    〈事例94〉P&GのAlways「Like A Girl」キャンペーン
    〈事例95〉トニーズチョコロンリーと現代奴隷制の撲滅
    コラム ソーシャル・グッドの実現は視点を上げて
    〈事例96〉アディダスの女性用水着とバーガーキングのProud Whopper

    おわりに

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