●もくじ
第一部 論稿「満州」通貨工作と日本的一体化論
日満通貨統制と金銀二重経済
戦時円系通貨と地域決済
上海悪性インフレと物資流通
鉄鋼増産計画と企業金融
第二部 雑記
日本支配層における植民地政策観の分析
旧植民地通貨金融工作史聴き書
七〇年代における日本植民地金融史研究
戦時下における日「満」鉄鋼業資料
旧満州戦時金融資料
あとがきより
本書は、わたしが学者の卵として、黴の生えた資料の中で紙魚のような生活をしていた、二十代の時の産物である。三十の年に、わたしはドイツへ留学し、その後、学者への道を断った。しかし、本書の中に、現在のわたしの活動の原型は、完全に看てとることができよう。
それは、つまり、マネタリストとウェーバリアンの二本足で立っているということだ。この二本足で立っているが故に、わたしは多くの非難を浴びた。しかし、今となると、逆に、マルクシストやケインジアンの知的没落に比べ、わたしが、それほどの理論的予測の誤りをせずに済んできたのは、この二本足があったからでもある。
そのような意味で、先の読みにくい世紀の変り目に当たり、こういう異端の書を世に公開するのも、何らかの意味があるのではないかと期待している。忘却の霧の中から甦ってきた本書が、どのような運命に引きずられてゆくか、それもまた、楽しみではある。
原典はすべて学術誌に掲載したものであり、本文はそれにすべて踏襲した。第一部には論文を集め、第二部には、資料紹介、書評、聴き書、研究動向などを集めた。なお、資料紹介には、資料原文を除き、解題のみを採ることとした。
●編集担当者より一言
大竹先生が学生のときに書かれた論文をまとめたもので、大変難しい本です。大竹先生もおっしゃっていました。「おれって、20代のとき頭良かったんだな」と。きっと、大竹先生の考え方の原点が、ここにあるのだと思います。
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