本書の中に出てくる「地位財・非地位財」というという言葉は、『金持ち父さん貧乏父さん』における「資産と負債」に負けず劣らず、お金の価値観を変える力を持っています。この言葉の概念を知ることで、消費活動は無意識のうちに変化します。
POSTED BYかばを
あなたの消費行動を変え、幸福度を上げるお金の新概念
「お金では買えない価値がある」という言葉には納得するものの、やはりお金が欲しい、できれば贅沢な暮らしがしたい、というのが人情です。
これは決して恥ずべき感情ではなく、動物としてのヒトのDNAに刻み込まれた
ホットシステムというべきごく自然な欲求です。
しかし格差が開いた社会、中でも中間所得層においては、
本書ではこうした欲求が不幸をもたらす可能性があると警鐘を鳴らし、
次のようなお金の新概念を提唱します。
・地位財=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの。幸福の持続性[低]
(例:所得、社会的地位、教育費、車や家などの物的財)
・非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、
それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの。幸福の持続性[高]
(例:休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境など)
非常にシンプルながら、今まで経済学ではほとんどテーマとされなかった
この「地位財」「非地位財」という概念は、
あなたを不要な競争的消費から解放し、幸福度を上げる力があります。
他人と比較したとき、あなたは中流から下流へ落ちていく
本書の原題は『Falling Behind : How Rising Inequality Harms the Middle Class』。日本語で仮題をつけるとすると「遅れをとらないように生きる中間所得層
――どのように不平等が中間所得層を害してきたのか」となります。
なかなか収入が増えない時代に生きる我々は、
このタイトルの意図を理解することなく、
幸せを手に入れることはできないのかもしれません。
*
中間所得層が「遅れをとらないようにすべき」なのか、
それとも「遅れをとっていること、支出を強いられていることは認識しつつ、
なるべく非地位財にお金を使う方向で生きるべき」なのか、
これについて本書は多くのことを示唆しています。
人間の本能、準拠集団による支出の強制、そして社会政策はどうあるべきか、
本書を読めば間違いなく各々の所得層の立場で新しい知見を得られることでしょう。
――「監訳者まえがき」金森重樹より
目次
監訳者まえがき――金森重樹Ⅰ 収入が増えない時代の幸せとお金の研究序説
幸福にのしかかる経済的圧力の正体 *序文――2013年版
無駄な消費に駆り立てる見えない因子 *序文――2007年版
Ⅱ 「普通の生活」でもどんどんお金が減っていく理由
第1章 なぜ私たちは同じ答えを選んでしまうのか?
第2章 所得の変化が映すいびつな世界
第3章 幸福の研究が明らかにしたもの
第4章 幸不幸を左右する見えざる手
Ⅲ 地位財・非地位財でわかる幸せのコスパ
第5章 私たちは身の丈以上にお金を使っているのかもしれない
第6章 ヒトをマウンティングに向かわせるホットシステム
第7章 ダーウィンの仮説で見る地位財? 非地位財?
Ⅳ 「平均以下」が私たちを幸せにする?
第8章 より過酷になり、脱落しつづける中間所得層
第9章 その正しい選択が、振り返ると愚行となる
第10章 格差から1人抜け出し、生き残る知恵
Ⅴ 今、問われている納税者としての金銭感覚
第11章 公共政策を意識すると、私たちの支出も変わる
第12章 生き残るカギは収入と支出のバランス
最後に、日本語版読者へ寄せて――ロバート・H・フランク
著者について
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H.J.ルイス講座教授(経営学)。コーネル大学ジョンソンスクール経済学教授。ニューヨーク州イサカ在住。ニューヨーク・タイムズ紙では10年以上にわたり経済コラムを執筆。著書に『ウィナー・テイク・オール』(フィリップ・J・クックとの共著、日本経済新聞社)、『日常の疑問を経済学で考える』(日経ビジネス人文庫)などがある。最新刊は『成功する人は偶然を味方にする』(日本経済新聞社)。
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1970年生まれ。東京大学法学部卒。ビジネスプロデューサー。不動産投資顧問業・株式会社金森実業代表取締役。
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25歳のときに1億2000万円の借金を負う。その顛末はベストセラー『お金の味』(大和書房)に詳しい。マーケティングの技術を活用して35歳で借金を完済し、行政書士として脱サラ。その後は不動産、建設、ホテルチェーン、医療法人、福祉事業などグループ年商100億円の企業グループのオーナーとして活動中。26万部を突破した『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(大和書房)など監修・監訳した本は数多い。