本書の最大の特色は、リアル店舗のマーケティング理論をECサイトに援用している点だと、個人的には思っています。確かに、ECサイトでは、店舗のように訪れたお客様と「どのようなものをお探しですか?」とか「こちらはいかがでしょう?」といった直接対話する機会はありませんが、それでもやはり画面を通じて、お客様と対話をして商品・サービスをおすすめしているのです。であれば、「Webの表示速度が遅い」「見づらい」「どこにどのカテゴリーの商品があるかわからない」などの不親切な状態であってはいけないわけです。リアル店舗だろうとECサイトだろうと、お客さまは「不快なお店」で買い物はしません。こうした商売の本質、原理原則はマーケティングのみならず、あらゆるビジネスに通じると思います。マーケターの方はもちろん、成果を上げたいとお考えのすべてのビジネスパーソンの皆さまにお読みいただきたい1冊です。

POSTED BY貝瀬
なぜセオリー通りにやっても成果が出ないのか?
「今よりももっと成果を出したい」そんな成長意欲を持ったマーケターの皆さんは、さまざまなセミナーに参加して成功事例を学んだり、ネットメディアに掲載されるノウハウ記事やトレンド情報を日々キャッチアップし、自身のマーケティングスキルを高めるために努力しているでしょう。
しかし、学んだことや知識として得たことを、いざ自身のサービスや活動で実践してみても、「なぜかうまくいかない」「成果が出ない」――そんな悩みを持つ方も多いのではないでしょうか?
では、なぜうまくいかないのでしょうか?
それは事例やノウハウの背景にある「本質的なロジック」や、もっと深いところにある「普遍的な原理原則」を知らないからです。
これらの本質的なロジックや原則を理解し、それを自在に自身のマーケティングに実践・活用できれば、マーケティング活動はもっと高い確率で成果をあげられるようになります。
本書は、著者・中澤伸也さんの約25年間にわたるマーケティング現場における実践経験と、多くの日本のトップマーケターたちとの経験の共有をもとに、マーケティングセオリーに対する誤解を「失敗しやすい落とし穴」という切り口で、マーケティングの本質的なロジックや原則を中心に解説します。
リアル/デジタルの両方に精通したベテランマーケターが教える!
中澤さんは、ソフマップでの店舗スタッフ、MDを皮切りに、ゴルフダイジェスト・オンライン、ガリバーなどでマーケターとして活躍し、リアル/デジタルの両方に精通しています。特にソフマップにおいては、日本初の「OMO型ECサイト」の立ち上げメンバーとして活躍した実績を残しています。
さて中澤さんによると、デジタルマーケティングは強力である半面、「ある制約」があり、店舗マーケティングでできることの半分くらいのことしか実現できないそうです。
制約とは「デジタルマーケティングでは、実際にお客様の行動を見ることも話を聞くこともできない」ことです。
そんな制約の中で、マーケターはどのようにしてお客様を理解し対峙し、コミュニケーションをとっていけばよいのでしょうか?
本質的なロジックと原理原則を知れば、必ず成功確率が上がる!
本書では、中澤さんが25年以上のキャリアの中で、試行錯誤しながらつかんだ、マーケティングセオリーの本質的なロジックと原理原則に基づいた知見・ノウハウを多数公開しています。たとえば、次のようなことです。
□PDCAは質よりも量を優先する
□ABテストは、①関心領域→②理由の順に検証する
□顧客の「買う気」のレベルに合わせて対応を変える
□「快適な売り場」作りはWebサイトの表示速度向上から始める
□顧客と商品をつなげるMD戦略でLTVを最大化する
□「自社にとっての顧客は誰か?」を明確にする
□インサイトは「状況ターゲティング」で考える
□課題の真因は「垂直方向」と「水平方向」の2軸で考える
これらのことは言われてみれば当たり前と思われるかもしれませんが、実はこうした本質を理解している人は少ないのが現実です。マーケティングのセオリーやフレームワークは。本質を理解することで初めて、効果的に活用できるようになります。
本質を理解せずにセオリー、フレームワークをいくら振り回しても、なかなか成果は出せず、空回りするばかりです。
本書では、そんなマーケターが陥りがちな「落とし穴」を回避する方法とともに、マーケターとしての能力を底上げするためのベース・スキルを中心に解説しています。
「真面目に施策に取り組んでいるのに成果が出ない」「打ち手がすぐにネタ切れになってしまう」などとお悩みの方は、ぜひ本書をご一読ください。
気になる本書の内容
本書の内容は以下の通りです。序章 本書におけるマーケティングの定義
マーケティングへの目覚め
データ分析への目覚め
戦略MDの実践
その後の活動
第1章 PDCAの落とし穴
PDCAは質ではなく量である
一発勝負ならベテランも新人も同じ
成功確率を確実に上げる方法
ベテランはなぜ初心者より速く成果を出せるのか?
ABテストは顧客との対話
顧客と対話できないデジタルという足かせ
ABテストの本質は、顧客との対話を通じた顧客理解
顧客理解を行なうためのABテストのお作法
データは顧客を語らない
データは結果であり、理由を語ってくれない
顧客の行動理由を知る
アンケート分析の落とし穴
アンケート分析の落とし穴を回避するために
PDCAは環境変化に弱い
戦略の失敗は戦術では取り戻せない
PDCAの弱点
ツインループPDCA
航空戦から生まれたフレームワーク「OODAループ」
第2章 Webサイト/アプリ改善の落とし穴
バケツの穴を塞ぐ(ファネルは後ろから改善)」の本当の意味
ファネルの後ろから改善すべき本当の理由
フレームワークやセオリーの裏にある本質理解の大事さ
買う気のない人に、 その場で買わせることはできない
顧客の検討段階に合わせたコミュニケーションを行なう
顧客に行動してほしいなら、まず行動すべき理由を提示する
「One to One施策」をおろそかにしてはいけない
正しい「カート落ちリマインド施策」とは?
行動すべき理由のないカートリマインド
行動すべき理由を付与したカートリマインド
商品イベント起点One to Oneアプローチ
不快な売り場で顧客は買わない
快適な売り場を作るための4つの必要条件
①売り場の衛生要件が整っている
②多くの商品やサービスと接触・比較検討しやすい
③商品やサービスの「価値」が正しく伝わっている
④不安と疑問を「先回りして解消」できている
快適な売り場の4つの必要条件をECサイトで考えてみる
①売り場の衛生要件が整っている
②多くの商品やサービスと接触・比較検討しやすい
③商品やサービスの「価値」が正しく伝わっている
④不安と疑問を「先回りして解消」できている
すべてのユーザーに影響を与えるWebサイトの表示速度
Webサイト表示速度改善の圧倒的な効果
Webサイトの表示速度改善にどのように取り組むか?
第3章 顧客目線の落とし穴
あなたのいう「顧客」とは誰か?
顧客定義を考えるきっかけとなったエピソード
顧客との関係値によって正義は変わる
顧客の目は何を見ているのか?
お客様の目線の先にあるもの
顧客商品戦略、LTVは商品(品揃え)に左右される
戦略商品カテゴリーをマーケティング施策に利用する
顧客のインサイト(Insight)に働きかける
「ニーズを捉える」の落とし穴
状況ターゲティング
第4章 マーケターの育成・成長の落とし穴
本質を自分の頭で理解する能力を高める
ベース・スキルとは何か?
第1層 体幹を鍛える
①Integrity(インテグリティ)
マーケターは常にインテグリティを試されている
②無知の知
「常にフレッシュな自分」であることを心がける
③FACTFULNESS(ファクトフルネス)
「業界の常識」を疑うことでイノベーションを起こした事例
第2層 コア・スキルを鍛える
正しい問いを立てる
インパクトと容易性
真因遡及
真因遡及を阻む3つの敵
真因遡及のやり方
【ステップ①】垂直方向の要因分解
【ステップ②~③】全情報を俯瞰・分析する
【ステップ④】水平方向の共通因子の特定
著者について
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1972年生まれ。
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1996年に 家電量販店のソフマップに入社。接客現場、バイヤー業務を経て2000年にECサイト「ソフマップ.com」の立ち上げに従事。約10年間でデータマイニング、店舗開発、経営管理とさまざまな職種を経験。
GDO(ゴルフダイジェストオンライン)のマーケティング責任者、エクスペリアンジャパンの執行役員CMO、IDOM(旧ガリバーインターナショナル)のデジタルマーケティング責任者、DX推進を歴任。2020年にRepro株式会社の取締役に就任し、新規事業の立ち上げ推進に従事。
マーケティングのエキスパートであるとともに、事業開発や企業のDX改革にも深い造詣と経験を持つ。直近ではマーケターの育成や教育に精力的に活動している。
25年以上のマーケティング現場の経験からWeb担当者フォーラムの連載「デジマはつらいよ」の原作執筆、IFIビジネス・スクールなどでの講師活動も多数。